Forecast Tech企業インタビュー記事第3弾は、世界初の排泄予測デバイス「DFree」を開発する、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役 中西 敦士氏にサービスの詳細と、目下開発中の蠕動運動検知器「B1」について語っていただきました。
注目サービス概要
DFree U1 / DFree B1
予測対象: 排尿タイミング / 排便タイミング
利用事業者:介護施設、リハビリ病院、個人など
利用シーン:排泄のコントロールが難しい場合、タイミングを把握したい場合など
主要利用技術:超音波ウェアラブル、超音波データからの独自アルゴリズム
―まずは、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の事業について教えてくださいますか
排泄予測デバイス「DFree(ディーフリー)」を企画・開発・販売しています。これは超音波センサーを使って膀胱の状態を確認し、予め定めていた大きさまで尿が溜まると「そろそろですよ」とスマートフォン上でお知らせをするというものです。今年のCES(Consumer Electronics Show)では、世界初の排便を予測する「DFree B1」というデバイスを発表しました。
排泄コントロールだけではない、多様な活用方法
―「DFree」について詳しく教えてください
人が尿意を感じる前に排尿を予測し、アラートを出すのがDFreeという商品です。
超音波センサーで膀胱を捉えて、尿が膀胱に溜まり膨らんでいくと、アプリ上で0〜10までの数値が動き利用者や介護者にお知らせをする仕組みです。
また、DFreeを使っての膀胱トレーニングもサポートしています。膀胱は筋肉なので、訓練によって我慢できるようになります。自分の膀胱はどれくらい溜められるのか、どれくらいの時間我慢できているのか、モニタリングできることでトレーニングが効いているのかも分かります。
他にも、排泄コントロールだけではなくて、実は認知症の方の転倒防止にも活用出来るんです。というのも、夜間の転倒の4割が自分でトイレに行こうとして起こってしまっているんです。自身の身体が動かないというのを忘れてしまうことがあるようです。そうなる前に排尿を予測するアラートが出ることで、事前に介助してあげることが出来るようになります。

ー現在どれくらいの台数利用されているのですか。
世界累計3,000台です。DFreeは、2017年介護施設向けに販売を開始し、2018年7月個人向けに販売開始しました。
排尿にお困りのアクティブシニアの方や、夜尿症などで困っているお子様(現在は6歳以上対象)にもご利用いただいており、嬉しいお声をいただいています。
ー集めたデータは何かに活用しているのですか
例えば失禁に関してですが、原因には何パターンかあるんですよ。
うまく溜められなくて、急に尿意を感じてしまい漏らしてしまうパターンや、男性に多いんですが、前立腺が膨らんでくると尿道が狭くなって全部出しきれてなくて漏れてしまうなど・・。データを解析し原因がわかると、その人にあった対処法が提案できますよね。
大腸に関しても、こういうエクササイズをすれば腸が動くと見えてくれば、データを基に解決策がわかります。また、血圧などの他のバイタルデータを掛け合わせれば、病気の早期発見が可能になるかもしれません。

ゼロからスタートした世界初の排便予測デバイス開発
ー排便予測「B1」について教えてください。
こちらは、大腸の動きを捉えて、便意のタイミングを予測するデバイスです。
腸の動きが激しくなるとアプリ上のステータスが「strong」になり、排便するとまたステータスが変化します。何を食べたら腸が動くのかがわかるので、便秘気味の方には排便リズムを掴むことにも役立つのではないかと思っています。
ー開発に苦労した点などありますか。
尿の場合は、膀胱が体の前面にあるので超音波で変化を捉えやすく、かつ頻度も多いのでデータが集まりやすいんです。また、膀胱内の尿量を測る医療機器は、大きく高価ではありますが元々ありました。便に関してはそれすらありません。〝ゼロからスタート〟ということが難しさではありましたね。

人生を楽しく最後まで生きるために。体の「予測」で生き方が変わる
-今後の方向性について教えてください
膀胱や腸だけではなく、胃など他の体内の部位の測定をし、様々な予測をする事も視野に入れていますし、バイタルデータを基に専門家がリアルタイムでアドバイスすることを実現したいですね。特に家庭内での遠隔のヘルスケアサポートを充実させたいです。
ー最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。
昨今、IoT(=Internet of Things)の〝Internet〟の部分が〝Intelligence〟に変わろうとしていると言われています。モノがインターネットを経由して通信する、という時代からモノ自体が何かしらIntelligenceを搭載し自ら考える、ということが主流になっていくんです。その流れの中で、 Forecast(予測)は一層注目されていくと思います。「FoT」というワードも出てくるのではないですかね?
中長期ではヘルスケアにとって「予測」は必要不可欠です。予測できれば予防できますからね。人間いつ死ぬのかが分かれば、生き方も変わってくるのではないでしょうか。
予測技術を活用して、健康に最後まで人生を謳歌する。そういう世界を作っていきたいです。
筆者コメント
「目指していた世界に近づいています。排泄業界がもっと盛り上がっていって欲しいですね!」と力強く語ってくださいました。著書「10分後にうんこが出ます-排泄予知デバイス開発物語-」 (2016年・新潮社)では、起業のきっかけとなったエピソードやDFreeのプロトタイプが出来るまでのストーリーなどが書かれています。是非ご覧ください!中西様、ありがとうございました!!